鉄鋼の組織写真
 鉄鋼材料の主成分は鉄であり、これに約1%以下の炭素が含まれています。この炭素の量により鉄鋼の組織、物性、化学的性質が変わります。ここでは、鉄鋼中の炭素濃度の違いによる組織の違いをお見せします。組織を見るためには顕微鏡が必要で、金属の場合光を通しませんので、通常の生物系の透過光を用いた顕微鏡は使えません。金属面に光りを当てて、その反射光を見る金属顕微鏡が必要です。また、表面に組織特有の凹凸を作ると、走査型電子顕微鏡を用いて数万倍まで拡大して観察することができます。以下に、金属顕微鏡(OM)と走査型電子顕微鏡(SEM)を使って撮影した典型的な鉄鋼材料の組織を示します。
 鉄鋼材料をそのまま見ても、それを作るときにできた傷が見えるだけで、組織を見ることはできません。そこで酸を主成分とした液で腐食すると、組織により腐食され易さが違うため、コントラストをつけることができます。鉄鋼材料の場合は、通常硝酸のエタノール溶液であるナイタールが用いられます。ここではナイタールで腐食した鉄鋼の光学顕微鏡(OM)写真と電子顕微鏡(SEM)写真を示します。

純鉄(純粋な鉄)
結晶粒界が黒く腐食されている。全体がフェライトという組織。
結晶粒界が網目のようにつながっている。結晶粒界の中である結晶粒は単結晶である。


S35C (炭素濃度が約0.35%の鉄鋼)


S45C (炭素濃度が約0.45%の鉄鋼)
SK5 (炭素濃度が約0.8%の鉄鋼)
黒っぽく腐食されている領域がある。この部分は拡大写真からわかるように縞状組織の集まりで、実際は層状組織の断面である。この層状組織は肉眼で見ると真珠の様な光沢があることからパーライトと呼ばれている。セメンタイトという鉄の炭化物Fe3Cとほとんど純粋な鉄であるフェライトの層状組織である。
電子顕微鏡写真で高い部分がセメンタイトである。フェライトはセメンタイトより優先的に腐食されるため、このような形状が見られる。
炭素濃度が高くなると、それに伴ってパーライトの割合が高くなっている。
組織全体がパーライト組織になっている。
OM
SEM
OM
SEM
OM
SEM
OM
SEM
腐食液によりフェライトが優先的に腐食され、セメンタイトが層状に残っている。
写真をクリックすると拡大写真を見ることができます。
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